Not Quick a Nine

日々の気になることを、独断と偏見で綴る、バカ親父ブログです

下町ボブスレーの失敗を大田区製造業の失敗って一括りにしてほしくない件

どうもここ最近世の中はオリンピックで盛り上がっているらしく、どこぞの集団がお祭り騒ぎをして作り上げた「下町ボブスレー」とかいうプロジェクトが大揉めしているとかなんとか。

私自身大田区の製造業を3世代に渡ってやっていて、この下町ボブスレーという言葉も周囲では腐るほど出てきますが、なぜかうちはこの手の話しにあまり縁が無く、一切関わっていません。

なので、この記事は下町ボブスレー擁護をするつもりは一切ありませんが、こちらの記事を読んで、「製造業を侮辱しないでほしい」とブクマに書き込むと何人かの人からIDコールがありました。

確かに言いすぎですね、失礼しました。

ただ、私がなんでそう思ったか?を含め『下町ボブスレーに全く関わっていない大田区の製造業』から見た意見を書いておこうと思います。

今回の件で大田区製造業が悪く言われるってのは風評被害だよ

最初にお断りとして、プロジェクトのGMともお取引きがありますので、色々とオブラートに包みつつ書いているということはご留意下さい。多分言いたいことの1/10ほどしか言えないと思います。

下町ボブスレーを絶賛するわけでもなく、全否定するわけでもないと最初に宣言しておきます。全くのフラットな意見ね。

まず、このプロジェクトについては大田区製造業のど真ん中にいる立場としては良く知っていますし、周りの工場でも色々とか変わっている方々が沢山います。が、うちでの先ほども書いたようにこのプロジェクトには一切関わっていません。恐らく大田区産業振興協会というものと深く関与していない為に縁がないのだと思いますが、まぁほぼ部外者です。

そんな部外者から見て、今回のプロジェクトについては、そらまぁそんな簡単な世界じゃないだろうし、あんなもんは伸るか反るかの勝負なので、オリンピックで金メダルなんて取ればそりゃぁ大成功だろうし、ダメならダメで大田区製造業の技術力はそんなもんか?と言われ、信用ガタ落ちだろうなぁという事は最初から分かっていました。

どうなることやらと思いながら見ていましたが、今のところは最悪の結果のなりそうですね。こりゃ大変だわと思っていましたが、例の記事も含め色々な記事がどうも大田区の製造業だめじゃん!!って方向に行き過ぎている気配があるので、おいおい、それはちょっと違うんじゃないか?って話しです。

製造業を侮辱していると思った訳

私はコメントで、「製造業を侮辱している」と表現しましたが、ちょっと言い過ぎましたね、すいません。

ただ、多少言い過ぎなところはあるにせよ、記事全体で無理矢理モリカケ問題に絡めたい意図が見え隠れしていて、その手の問題に引っ張られて製造業が貶められるのは、その世界で誇りを持って生きている立場としては黙っていられないんですねぇ。

で、私がコメントした記事はこちらなんだけどもね

www.po-jama-people.info

まぁ、良くまとまってますし、このプロジェクトのダメさ加減は良く書かれています。

もうおっしゃる通りなんですが、モリカケと同じだ!!とは思いません。

プロジェクトGMの発言から見る総理との関係やら、色々な取り計らいを一列に並べて、「ほら、モリカケにそっくり!!」ってやれば、そりゃキャッチーだろうし、そうやって書かれれば、なるほど言われてみれば似てるなぁとなり、そりゃぁけしからん!!てな感じに話が進みます。

製造業のいちプロジェクトのとあるGMと安倍総理の関係がちょっと怪しいという話しと、プロジェクト全体の失敗の話しとごちゃまぜにして語るような書き方をすると読んだ人は結構な確率で「大田区の製造業クソじゃん」とか、「大田区の製造業はもうダメ」とか思うわけですよ、製造業を一緒くたにして考えてほしくないと思うわけです。今回のプロジェクト失敗の件と政治云々を一緒にして考えるのはやはり違和感を覚えます。

まぁ、仮に本当にプロジェクトGMと安倍さんとの間に、贈収賄やら違法行為やらがあるなら、それはそれで個別に断罪されるべきです。 しかし安倍総理が星の数ほどあるJAPANブランド育成支援事業の中から、話題性があり世間が食いついてくれそうな事業を取り上げて取り計らうってのは、そんなに責められるような話しじゃないと思います。

これが製造業ではなくどこかの工芸品だろうがなんだろうが別に構わないし、それを一つ一つやり玉に挙げて叩くというのは、建設的とは思えません。国の代表が各産業の発展を目指して色々と働きかけをしていくってのは、間違っていないというか、むしろ当然の行為じゃないかと思います。

みんなで盛り上げることがそんなに悪いんだろうか?

今回のプロジェクト自体、色々と問題はあったし成功とは言い難い結果でしたが、補助金がダメだったとも思いませんし、総理大臣が一緒になって日本の製造業を盛り上げようとするのは当然だと思いますし、別にそこは突っ込むところじゃないだろと思います。

ちなみにこちら中小企業庁:JAPANブランド育成支援事業ってやつで、こちらにどれだけの事業が支援を受けているか、どの程度の金額の支援を受けられるかが公表されています。改めて見てみると、まぁ色々とあるもんだなぁと驚かされます。

仮にそういう事業が地元で始まったとして、それに乗っかって、まちづくりの観点からお役所と近辺の商店街などが絡んで盛り上げていくってのはなんら不思議じゃない構図で、そこをいちいち文句言ってたら、世の中そんなもんだらけでキリがないです。

ただ、下町ボブスレーに関しては、書籍化とかドラマ化とか、もうちょっと成功してからやらないとヤバイんじゃね?という感があったので、その辺に関しては私も「ほれ、言わんこっちゃない」とは思っていますけどね。

この辺のツイートに関しては、左は社長が1人で作業場で撮っているもの、片や総理大臣や政治家やらお偉いさんたちに囲まれて、恐らく産業プラザか何かで笑顔で撮っているものってことで、シチュエーションが違いすぎて比べるのもおかしな話しですよ。こうやって並べられると、右側の信用できない感が半端ない気はしますが……。

実際に作業をしている中身はどちらも大差無くて、この写真にあるように、総理大臣が推したからダメという話しでも無いだろうと思う。

一瞬目に入る情報だけに捕らわれて情報操作されないようにしないとダメだなぁと思わされるツイートです。

加工業者はボランティア

そもそもこのプロジェクト自体が大田区産業振興協会だったり、その周辺の方たちからが出処で、そこから派生して話が膨らんでいったわけですよ。

例えばこんなブクマコメントがありました。 http://b.hatena.ne.jp/entry/357621023/comment/ss-vtb.hatena.ne.jp

いやいやいや、、、アホなことを言うんじゃないよ、この案件に関わった連中って言い方でなんの罪もない町工場の職人さん達を一括りにするなと。

この案件に関わった人の多くは一般のしがない町工場のおっちゃん達です。

彼らは振興協会経由だか町工場繋がりからこのプロジェクトの話しを知り、図面をもらってボランティアで部品加工をしているそうです。

「夢を実現したいから、悪いけど加工賃は無償で作ってほしい。納期は2週間だ」とお願いすると、町工場の人たちが「じゃあ、俺はこれを作る」「俺はこっちだ」という形で自然と分担が決まっていったという感じです。
打倒フェラーリの「下町ボブスレー」、大田区中小企業が世界に挑戦状を叩きつけた【前編】(6/7ページ):nikkei BPnet 〈日経BPネット〉 より引用

追記:実際にプロジェクトに参加したわけではないのであくまでも聞きかじった情報ではありますけどね(参考リンク:こことかこことか参考になります)

言っておきますがタダですよ無報酬ね、本当に全部がそうか知りませんけど、ここ結構重要なとこですよね。

町工場と言えども1台数千万する機械をリースしていたりするので、機械1台につき1日数万~十数万は稼がないとリース代払えないところに、試作のワンオフの品物を加工するのに1日機械を開ける、下手をしたら数日かかる事もあるかも知れません。数台の機械でギリギリで経営している工場からしたら、結構な出費です。

もしうちの会社にこのプロジェクトの案件が来たとしても、恐らく余裕が無くて消極的になりますし、周囲の工場でも同じような声は聞こえてきますから、みんな同じような状況と思います。

そう考えると、このプロジェクトに賛同して関わっているボランティアで参加している人たちは被害者なんじゃないかな?

ネット情報など見た限りではほぼトップダウンでやってますから、マシンが遅いだの、安全じゃないだの、レギュレーション違反だのって不都合は、殆どが設計などのトップ周辺のウェイトが大きいと思われます。

良くわからない図面を持ってきて、タダで作ってくれと言われ、作って協力したら、いつの間にか世間から「あの案件に関わった連中」「大田区の製造業も終わりだな」と言われてしまうというのはちょっと可哀想です。

この案件に協力してきた多くの会社は別に安倍案件だからとも思っていないし、補助金が欲しくてやっているわけでも無いんですよね。情に厚いが故に、ボランティアとして協力しただけです。

そんな町工場は被害者なので、大田区町工場の加工技術は落ちたなどと悪く言うのは勘弁してあげてほしいと、切に思います。

私が思う下町ボブスレーのダメだったところ

先程も書きましたが、無償ってのが相当ネックになっているんじゃないかと思います。

仮に本当にタダで加工したとすると、各部品毎に負担の割合は違いますから、1つの部品が1万円だったところもあれば、1点10万円、いやそれ以上の加工費だったところもあったかも知れませんよね。

これだけの負担に見合うだけの各企業のPRになっているかどうかが重要です。

公式サイトにこうあります。

なぜボブスレーなの? 大田区は金属加工会社が集積しており、多品種小ロットや試作品が得意な会社が多いです。冬季の競技は道具の重要性が高く、大田区や日本の技術がPRできるのではという想いからボブスレーに挑戦しました。

今回は下町ボブスレーが失敗した形になっていますが、これ成功したとして参加企業はどういうPRになるのか? 早い話、誰が得できるのか?というのもポイント。
プロジェクト側からその辺の詳しい発表があれば分かりますが、私が探した限りは見つかりませんでした。

このボランティアで参加したであろう企業の負担と実利の不一致さ加減が下町ボブスレーの妙に歪んでいる象徴的な部分だと思っています。

加工品は全て有償にすべき

じゃぁ、協力企業の負担を実利を均等にするにはどうするの?って話しですが、これの一番簡単な解決方法は、やはり加工は全て有償で行うべきと思うのです。

ただ、単純に有償にすると、プロジェクト運営側の負担が重すぎてどうにもならないでしょうから、協力会社には一定金額の寄付を募り、その寄付金での運営とすべきです。

公式サイトにも寄付金の報告があり結構な額の寄付金が集まっています。これに加えて、今回ボブスレー加工に関わった企業全部に一定額の出資金を募り、ボブスレー製作に関して加工品の工賃は全てそこから賄うようにします。

ちなみに1号機は設計・材料費で1800万、これに各町工場の加工費が乗っかりますから、どうでしょうかね、加工費が設計材料と同じだと仮定すると3600万ってとこでしょうか?

ていうか、設計と材料が高くね?って思いますが、そこは綺麗にスルーしておきます。
加工がボランティアなのに……(T_T)

私なら、この設計や材料費あたりもボランティア同然大幅に値引きしてもらって、設計、材料費、加工費、全部で1000万以内ってところで勝負しますね。 高すぎでしょ、設計費、どうなのよ?? よくわかんないけど……。

ま、いっか、、、

とにかく、、この辺で収めると、補助金やらなにやらである程度賄えるので、あとは参加企業に寄付を募ればギリギリやっていける計算です。(かなり無理矢理&無責任感ありますけど)

とにかく、こうすることで、各企業の負担は一定になり、なおかつボブスレー製作に関わる加工を行えばその加工に対してのインセンティブが発生し、収入という実利になって返ってきます。利潤追求は重要。 より多くの貢献をすれば、寄付金以上の見返りも期待できる訳で、実利を得ると共にもっとやっていこうという意欲を向上させる一石二鳥の方法です。

さらに、参加企業のPRを考えるならば、ボブスレー製作の加工に関わった企業のみを集めて大田区産業プラザなどでの展示会を無料で行えるようにすれば、立派なPRにもなります。

安倍総理や電通が関わっているなら、その展示会をTV放映するのもありだと思います。
過去には私自身どの内閣かはすっかり失念しましたが、企業のIT化を推進する目的のPR番組に出演した事がありますから、そういうのは全くもって普通に実現可能だと思います。

そもそも違約金請求して、それだれが受け取るの?

聞くところによると、違約金が1台につき6800万円、今までに4台提供しているから2億7200万とかっていう契約らしいです。ちょ、、、なんていうボッタクリなんでしょう。契約とはいえ怖いですね。

ところで、この違約金って実際に支払われたらどこに行くんでしょうか??

これって参加企業全部で山分けですかね??

きっと加工負担の大きかった企業とかもありそうで、均等割りじゃ喧嘩になりそう。

たとえばこんな問題にも、先程のように有償で加工するようにしておけば、その金額=負担の割合になるので、違約金の割り振りも簡単だろうにと思ったりもします。

まぁ、契約云々の話しは裏で色々とあったんだろうとは思いますが、記者会見で違約金の請求云々ってのは言わないほうが良いような気がしますね。契約がそうなんだからってのは当然なので、それはそれで裏で粛々と進めればいいだけで、なにも声を大にして「訴えてやるぅ~~!!」ってやるのは、やっぱり格好わるいし、なによりも大田区の製造業をPRする為にやってたなら、下町製に用がないと分かった段階で黙ってひっそりと身を引いた方が格好いいし、それが下町の粋ってもんです。

ラトビア製と下町製の違いは勘所

今回下町ボブスレーからその座をかっさらっていったのはラトビア製のボブスレーということで、どんな会社かと暫く調べていましたが、なかなか見つからないんですよね。

どの記事でもラトビアBTC製ってなってて、検索するとほぼビットコインの記事しか引っかからないというオチ。

最近になってだんだんとボブスレー関連の記事が増えてきてようやくどこの会社か特定できました。

こちらです。

Bobsleja tehniskais centrs, Ltd. http://bobsleja-tehniskais-centrs-sia.landingpage.balticexport.com/

もうねHPもなんも無いんですよね。 これはラトビア語のなので、英語に訳すとBobsleigh Technical Centerってそのままじゃん!!という社名です。

ボブスレー元オリンピック代表が社長の会社だそうで、従業員は6人という話しです。

製造業の技術という面では、日本もラトビアも大差無いはずなんです。 もう世界の製造業の技術力なんてのはほぼ横一直線になってますから、日本で作れるものは海外でも作れるし、その逆も然りです。 今は加工機はどこにいっても大差ありませんからね。

唯一違うのは、昔ながらの加工の勘所ってやつです、ラトビア製の優れているところは実際にボブスレーに乗っていた人の意見が十分に反映されているソリということかも知れません。

この動画を見ても分かりますが、加工機なんて何世代も前の古いものばかりです。 ところが、動画の後半には各有名自動車メーカーの名前がずらずらと出てきます。原始的な構造である反面、シャシーは最先端の空力を考慮して作らないとダメなことが分かります。

そう考えると、大田区にはソリを作るだけのハードはあったけども、早いソリを作るソフトウェアが無かったって事じゃないかと思います。

勘所と言えば、日本の製造業の売りの一つで、昔ながらの職人さんは、信じられない精度を手動のマシンで作ったりしました。
同じ図面で加工しているのに、最新鋭のマシンで作った方はぎくしゃくしているのに、ベテランの職人が作った部品は、スムーズに動くなんでのは、よくある話です。

下町ボブスレーも、書籍化とかドラマ化とかしている金銭的な余裕があるなら、どこかから専門家を雇って常駐してもらってボブスレーのアドバイスをもらったりすれば、また展開が変わったのかも知れませんね。

最後に

色々と書きたいことを書きましたが、一方で下町ボブスレーGMにも同情する部分もあります、あれだけ多くの人が周りにいながら、もっと最良な道筋は無かったのか? 適切なアドバイスをする人がいなかったのか? そんなアドバイスなんて出来ない雰囲気だったのか?などなど、色々と思うことは多々あります。

また今後、大田区の工業会の方など、私なんかよりももっと深く下町ボブスレーに関わっている方に会うことも多いので、その際には色々とお話を聞いてみたいと思っています。

そして、今回の試みが単なる失敗に終わるんではなく、この出来事を糧にまた違う方法でチャレンジして行けるような結末を迎える事が出来るよう願っています。

ではでは(^.^)/~~~