Not Quick a Nine

日々の気になることを、独断と偏見で綴る、バカ親父ブログです

【映画】『舟を編む』ネタバレ感想

舟を編む 通常版 [DVD]
大渡海は今を生きる辞書を目指すのです


2017邦画オススメランキング 第1位
ほのぼの度★★★★
ストーリー★★★

2013年公開
原作:三浦しをん
監督:石井裕也

あらすじ:
出版社・玄武書房では24万語を予定している辞典『大渡海』の製作を進めていた。営業部に所属していた馬締光也(無口で人付き合いが苦手)は定年で退職する荒木の後釜として辞書編集部に抜擢される。営業部では変人で無能扱いされていた馬締だが、言葉の知識と強い執着心を活かし、辞書編集者として才能を発揮していく。

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登場人物

■馬締光也(松田龍平)
この物語の主人公というべき人物。
馬締(マジメ)という名前の通り、真面目だけが取り柄のような男。
大学院では言語学を専攻していた。
もともと玄武書房営業部所属で周りから変人扱いされていたが、三好からの紹介で辞書編集部に抜擢される。
「西に向いた時に北にあたる方が右」

■タケ(渡辺美佐子)
学生時代から馬締がお世話になっている下宿のおばさん(香具矢の祖母)。
馬締の一番の理解者
だが、13年後パートには既に亡くなってしまっている。
「みっちゃん、、、ちょっと男前になったね」
「若いうちに一生の仕事を見つけて、それだけでみっちゃん幸せなんだから、あとはずーーーんと行くだけだよ!」

■林香具矢(宮崎あおい)
タケの孫。
月夜の晩に突然馬締の前に現れ、馬締に一目惚れされる。
真面目な馬締に似合うとてもしっとりと落ち着いた雰囲気を醸し出していて、その雰囲気がそのまま物語全体を包んでいるような、そんな存在感です。
「みっちゃんってやっぱり面白い」

■荒木公平(小林薫)
玄武書房辞書編集部のベテラン編集者。
松本先生に「君のような編集者が他にいるとは思えません」と言わせるほどの敏腕編集者。
定年を迎え奥さんの看病の為に退社する際に、自分の代わりとして馬締を抜擢する。
2008年パートでは、奥さんを看取った後に編集部へ嘱託として戻ることになる。
「初めに言葉ありき、とにかく言葉を好きになることだ」

■松本朋佑(加藤剛)
『大渡海』編集主幹。
大渡海編集の舵取り役であり、馬締はこの先生の為に辞書の完成を急ぎ奮闘することになる。
加藤剛の存在感はさすがと言わざるをえない。
「大渡海は今を生きる辞書を目指すのです」

■西岡正志(オダギリジョー)
玄武書房辞書編集部員。入社5年目。
三好と付き合っているような、いないようなチャラ男。 最初はあまり乗る気ではなかった辞書作りにもだんだん乗ってくるものの、途中で辞書編集部存続を条件に営業に配置換えされてしまう。
『酔ってプロポーズとかまじダサい』

■三好麗美(池脇千鶴)
西岡の彼女。
馬締を辞書編集部に推薦した張本人。
西岡とは同棲しているけども、ふたりとも好き勝手に他の人ともデートする、そんなフワフワした仲。
「まーくんね、辞書編集部辞めるみたい……。」

■岸辺みどり(黒木華)
2008年パートからちょっと鼻っ柱の強いOL風で登場する。
最初は辞書編集部に馴染めない彼女も、徐々に打ち解けていく感じが、映画のスパイスになっている。
「私、あのぉ、、シャンパンしか飲めなくて」

■村越局長(鶴見辰吾)
辞書作りを完全否定している玄武書房の局長。
荒木が後任を探している時には嫌味を言い、儲からない部署として辞書編集部を無くそうと画策する。
『もし辞書を作りたがるような奇特な者が居るとしたら、どうせ仕事が出来ないでしょうから、どこの部署からでも連れて行ってもらって構いませんよ』

■トラさん
タケが飼っている猫であり、馬締と香具矢の愛のキューピットである。

感想(1995年パート)

淡々と進む物語が辞書作りを彷彿とさせる

この作品、とにかく淡々と物語が進んでいきます。
特に大きな障害もなく、ただただ淡々と進みます。

地道に淡々と、地味な日々の作業を確実に着実に進めて行く。 途方も無い道のりを、ひたすら辞書の完成に向かって進んでいく感じが、作風にとても良く現れていると感じました。

辞書作りの大変さを改めて感じる

この作品を見て改めて感じたのが、辞書作りってこんなにアナログなの?って事。

日頃生活をしながら、新しい言葉に出会うと、その場で「用例採集!!」なんて言いつつ、メモカードみたいなやつに言葉と意味を書いて、ポッケにしまうわけですよ。

その姿は、目の当たりにしたら、相当滑稽ですよね。

でも、そうやって日々の生活の中で、新たな言葉を見つけてはメモをしていくっていうのが、辞書作りの最初の一歩なんだなぁって、この映画を見て初めて知りました。

それにしても、メモカードですよ、アナログですよね。
1995年頃ってそういえば、携帯も電話をするもので、今みたいに色々とメモを取れるようには出来てなかったかなぁ……。
でも、電子辞書みたいなあんな感じのパソコンというかポケコンみたいなのもあったけど、それよりもやはりメモをそのまま、ああいう感じでカードで管理しちゃうほうが便利なんですかね。

そうやって集めた言葉から、一つずつ取捨選択して辞書を作っていって、出来上がりまでに10年以上が必要とかって、気が遠くなります。

今でこそスマホなんてもんがありますが、そりゃ1995年の頃はPHSがではじめた頃ですもんね、色々と大変ですよ。

西岡:これどんだけかかるんすかぁ!?
荒木:三省堂さんの大辞林は28年もかかってる……
西岡:28年!! じゃぁ、荒木さん完成する前に死んじゃってる可能性ありますね
荒木:あのね、、、、その可能性はお前さんにだってあるんだよ。

まさにその通り。

企画した人が完成を見られない可能性もあるのが、辞書作りなんですね。

他人の持っていないモノが個性になる

荒木:用例採集の中から「広辞苑」「大辞林」の両方に載っているものは◯、片方だけのものは△。◯は大渡海に載る可能性が高く、△はそれよりも低い。しかしもっとも重要なのは無印の言葉だ。他の辞書に載っていないどんな言葉を選ぶかで、大渡海の個性が決まる。

劇中で大渡海にどんな言葉を選ぶかを荒木が説明する場面があります。
個性は他の辞書に載っていないモノで決まるというところ。

これは辞書に限らず全てのものに関して、同じことが言えますよね。

ブログにしても然り、会社や人にしてもそうです。
他に無いものこそ、捨ててしまわずに大切にしていかないとダメなんだなぁと、今更ながらこのシーンでウンウンと頷いてしまいました。

現状が変化していくことの意味

色々なものが、時間とともに日々変化していくのが成長なんですが、その変化が時に悲しいこともあります。

荒木が定年で編集部を去る際に、松本先生が漏らす一言。

松本:荒木くんが居なくなるということは、私にとって半身を失うようなものです……

松本先生が本当に悲しそうに漏らすシーンです。

私はフットサルチームの代表を随分長い間やっていますが、色々な事情でメンバーが去る時には同じような気持ちになりますね。

メンバーの成長の証としてチームを卒業していくわけですが、お祝いをしてあげないといけない場面でも、やはりメンバーを失うことは悲しい。

本当にチームにとって大切な人が居なくなる時には、もうチームを解散しようか……とも思うくらいで、このシーンの松本先生の気持ちがとても良くわかります。

日本語も日々変化していくように、辞書も変化していき、人もまた変化していくということなんですね。

この映画は全体を通して、ゆっくりと確実に物事が変化していくということを人間の生死に、その中でも変わらない確かな気持ちや思いがあるって事を辞書を残すという事に例えながら、大きなメッセージとして伝えている気がします。

香具矢との出会いはファンタジー

この映画の中でのもう一つのストーリーが、馬締と香具矢との恋です。

特に、香具矢と出会うところはとてもファンタジックです。

月夜に突如現れるかぐや姫の如く、猫のトラさんを抱えた香具矢が突然現れます。

そんなもん、ほれてまうやろ~~!!!
と言いたくなるとても良いシーンです。

その後、香具矢に惚れてしまった馬締が筆で書いたラブレターを渡したために、ラブレターが読めずに怒り出してしまうシーンはちょっぴりドキドキしつつも、波乱万丈なシナリオを期待していたら、そうでもなかったんでちょっと拍子抜けしましたね。

チャラ男だって辞書編集部が好き

チャラ男キャラで通っていた西岡ですが、そんな彼がどうでも良かった編集部が無くなるかもという噂を聞いて、それを阻止しようと本気になる姿には胸が熱くなります。

三好:大渡海が中止になったらまーくん楽になるんじゃないの?
西岡:…………。  うるせぇよ……!!

チャラチャラしていながらも、辞書作りという仕事のどこかに魅力を感じていて、好きになり始めていたのに……くそ!!って感じがとても良く伝わってきます。

その後、自分の移動を犠牲に辞書編集部を存続させるわけですが。
なかなかやるじゃねぇかチャラ男!!

その後馬締と西岡、三好と3人で下宿で飲み明かすシーンは地味に泣けます。 西岡、実は良いやつなんですよ。マジで。

馬締:頭でっかちなだけじゃ行きてる辞書は作れない。僕にそう教えてくれたのは西岡さんです。
西岡:馬締、、、お前、俺を泣かせんなよ……

感想(2008年パート)

12年後の2008年パートに入ってからは、が~~~っと物語のスピードが早くなります。

荒木さんも奥さんを亡くされてまた編集部に嘱託として帰ってきて、いよいよ、辞書作りも大詰めに入って来ます。

「血潮」が抜けてる事件の対応が素晴らしい

辞書作りが大詰めに入り、編集部の人数も断然増えて作業がみるみる進む中、「血潮」という見出し語が抜けている事件が発生したシーン。

抜けが1つあったということは、まだ他にもあるかもしれないから、全ての語句をチェックしなおそうと馬締が提案し、全員で徹夜の作業に入ります。

私もモノづくりをしている関係で、製品がもう完成間近となった段階でミスが発覚することがあり、全数チェックを余儀なくされる場面があり、このシーンのヤバさ加減に胃が痛くなりました。

ちょっとしたミスは見なかったことにして納めちゃえば、あとはなるようになるさって時も無くはないんですが、やはりこういう馬締真面目な対応や精神は、モノづくりの現場には欠かせないよなぁとづくづく思いました。

残されたもの達の使命として

松本先生の病気が悪化するなか、辞書編集部の作業もあと僅かとなると同時に、先生の命もあと僅かと知らされます。

どうにか早く出版しようと頑張りますが、時既に遅し……。

喪服を着てお蕎麦をすすりながら、静かに泣く馬締の側に寄り添って、ただ背中をさすることしか出来ない香具矢のシーンはとても物悲しく、どうにもならない残酷な時間の経過を思い知らされます。

その後、すぐに辞書の完成披露パーティーのシーンが入っていることから、あとほんの僅かの差で間に合わなかった事が伺えます。

あの時、血潮のミスを見逃していれば、もしかしたら間に合ったかもしれない……なんて邪心がよぎりましたが……。

馬締:明日から改訂作業に入らなければいけませんね。

完成した辞書もより良い辞書へ、時代に合った辞書にする為に、今後も改訂されて生き続けるんですね。

まとめ

この映画を見ようと思ったのは、ちょっと前にエントリーした邦画オススメを統計した記事でこれが1位になったからで、恐らくあのエントリーを書かなければ、この映画は私の気持ち的には箸にも棒にも掛からない存在でした。(ファンには申し訳ない)

正直な感想を言ってしまうと、1位になるほどの映画か??とは思います。

が、、、かなり独特な雰囲気をもっている映画だなあと。

そして、とても落ち着く映画だなと感じました。

宮崎あおいさんと松田龍平さんの雰囲気も最高だし、恐らくキャスティングが上手なんですよね。 映画の雰囲気に出演者がとてもマッチしています。

特にオダギリジョーいいです!
もともと仮面ライダーの時から、あののほほんとした雰囲気が好きでしたが、彼の味がとても良く出ている役柄だったと思います。

全てがベストマッチングな配役の映画はそれほど多くないと思うので、素晴らしいです。

てことで、私の評価は70点とさせて頂きます。

なんでも、舟を編むのアニメも公開されているという事なので、そちらも時間ができたら見てみようと思います。

ではでは(^.^)/~~~